角膜実質は80%以上が水分のため、狭い創口に超音波チップやインジェクターを挿入すると角膜実質内の水分が抜けてしまい創口が觜開したままになります。この為、水分を角膜実質に戻す操作即ちHydrationが必要となります。
2.4mmの角膜創口では、角膜創が伸びたり凹んだりしないと仮定すると計算上円周4.8mm(直径約1.53mm)の円柱がギリギリ挿入できることになります。スリーブを装着した超音波チップは約1.3mm径の円柱であるため図に示すようにチップが挿入されると紡錘形の創口に変形し左右に隙間を残した形状になります。核破砕を進めるにあたりチップ先端は上方角膜を圧迫変形させ、一番水分が抜ける部位は角膜創口の上方実質(図28)になります。そのため、上方角膜創口に重点的に水分を戻してあげましょう。その方法は、灌流液シリンジの針先を角膜創口の上方に当てて灌流液を吹き付けながら創口全体に水分が補給される様に左右に針先を動かして下さい。角膜実質に水分が十分補給されると前房が形成され眼圧が急上昇します。その後眼圧を調整します。創口の左右端にHydration を行う事を推奨する教科書が多いですが、極小角膜切開手術では創口の中央部の水分が抜けているので左右端に水分を補給しても中央部で前房水の漏れが確認される事が良くあります。中央部に水分を補給しましょう。創口の左右端に水分を補給しながら中央部に十分量の水分を補給するためには水分補給が必要のない実質に水分を多量に注入することになり正常組織の破壊にもつながります。ですから、水分が抜けている中央部分にだけ水分を補給することが良いでしょう。
灌流液用シリンジの針先は前述の様に曲げて下さい(図13)。再度説明すると、27G鈍針の先端を0.5mm程の長さで角度120-135度程度に持針器等で曲げて下さい。この時、針先を潰さない様に注意します。シリンジの把持方法も前述した様に先端の動きに制限がない持ち方でシリンジを左手で持ちながら支えます。
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