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Phaco Chop法による核分割

更新日:2021年11月23日

研修施設では、殆どが初期研修にDivide and Conquer法を採用しています。何故でしょうか?Phaco Chop法と比較して簡単で誰にでもできる手技と信じられているからなのでしょうか。また、教える側もこの方法しかマスターしていないからでしょうか。両者とも、広く一般に広がってから30年ほどが経ちます。この間に、IOLや機器の進化により極小切開無縫合手術になり、核処理も効率的かつ安全になりました。しかしこの間に、核分割吸引法にどれだけの進歩があったでしょうか?依然Divide and Conquer法を使う術者が多数を締めていて、有効吸引圧、hold ability、follow ability、安全性が格段に向上したPhaco machineの性能を十分には生かしていないと感じます。


適切な溝堀には何回チップを前後に往復させ超音波をどれだけ発振すれば良いのでしょう?核とエピ、皮質の境界にはっきりしたものがないため溝堀だけで破嚢することも初心者にはありがちな合併症ですね。二分割後核が回転できない初心者も非常に多いですね。4分割、8分割って簡単ではないですね。核の大きさは症例毎異なっていますが、溝の深さの最適化の判断は難しいですね。

それでは、Phaco Chop法を行わない術者にその理由を尋ねると、チップの打ち込みでそのまま後嚢を突き破りそうだから、チップによる核の把持が難しいから、水晶体を過度に下方に押してしまいチン小帯に負荷をかけてしまう、それとフック先端で嚢を破りそうだからと回答する術者が多いですね。

Divide and Conquer法でもフックや超音波チップの使い方は同じだと思います。打ち込むチップの深さや超音波発振強度の調整、フットスイッチやフックの扱いを間違えなければ両者に大きな違いはないと考えます。

Divide and Conquer法を教えるにあたって一番難しいのは、溝を何mm掘れば良いかの指標がないことです。即ち、核の大きさや硬さは患者さんにより千差万別であるため、一律にチップの直径の2倍の溝を掘ると決めたとしても核が割れない症例が出てきます。この場合、分割の手技が問題であるのか、更に溝を掘れば良いのかが指導医にも判断できない事があります。このため患者さん毎の指標が必要と思われますが、現状それは存在しません。加えて、核とエピの境界は連続的に移行するため割面からも境界を同定することはできません。逆に、境界が存在しないため水晶体全体が核と誤解しやすいとも言えます。このため初心者はエピを核と誤解して強い超音波を発振してしまい後囊破損事故を起こすことがよく有ります。一方、筆者が提案する核を同定して核を破砕吸引する術式ではそのような指標は不必要で術中にエピに埋もれた核を掘り出し、核の位置や大きさを目からの情報により判断して手術を行えば良いだけです。


核の吸引把持が困難


超音波チップは左手操作の補助を行うだけで、核の固定までは基本的には必要のないのがPhaco Chop法です。初心者は、核の分割方法を正しく理解できていないため、フックで硬い核を下方に押すことで水晶体全体を押し下げてしまい核の把持が更に困難にしてしまっています。このため、Phaco Chop法ではチップの核深部までの刺入と最大吸引による核の固定が絶対に必要と誤解されていると思います。しかし、核の赤道部と嚢の間にある、皮質やエピにフックを挿入して硬い核を避けることで核の下方移動は予防できます(6時方向で核分割を行うと、分割フックが核を下方に押し下げ分割が困難になる場合がある。このため、4−5時方向から分割を行うことを推奨します。)。その後、フックを核の赤道部のやや後囊よりに刺入させチップとフック(赤矢印)とにより挟み込むようにすると核は簡単に半分に割れます(図7、ビデオ 核処理)。このように、核を押し下げないコツを掴めばそれほど難易度の高い手技ではありません。また、これまでの教科書で推奨される様にチップの核中心までの刺入や右足の微妙な吸引圧のコントロールをしながら両手で核を分割する手技は初心者には非常に難しいものです。しかし、上記のチップとフックによる挟み込む方法であればチップの深い位置までの刺入と右足の微妙なコントロールを必要としない手技で初心者でも核分割は可能と考えます。


このように、核を押し下げないコツを掴めばそれほど難易度の高い手技ではありません。また、これまでの教科書で推奨される様にチップの核中心までの刺入や右足の微妙な吸引圧のコントロールをしながら両手で核を分割する手技は初心者には非常に難しいものです。しかし、上記のチップとフックによる挟み込む方法であればチップの深い位置までの刺入と右足の微妙なコントロールを必要としない手技で初心者でも核分割は可能と考えます。

また核が大きい場合、チップを6時方向の深い位置まで挿入するのは非常に難しいと思います(図7参照)。また、連結棒(図19)によって核を下方に押し下げる原因にもなるため、4時方向での核分割を推奨します。


フックの先端で後嚢損傷を起こすかも?

水晶体の大きさ以上にかなり硝子体方向に突き刺さない限り後嚢破損は起こらないことは豚眼での実習で経験できるでしょう。また、水晶体は下方に凸の半円形ですから、フックを下方に押しても水晶体形状に沿って下方移動して後囊に引っ掛かる危険度はかなり低いです。このため、Phaco Chop法での核分割はフックを核の赤道部よりやや後囊よりに刺入し、フックを平行からやや上方に動かせば後囊に引っかかることは決してありません。


核が割れない?

水晶体線維走行に沿ってフックとチップ先端で挟み込むように左手のフックを動かせば必ず割れます。核が割れない原因の殆どは、核ではなくエピを核と思って割っているからです。核を同定して挟み込むように核を割りましょう。

核分割時にDivide and Conquer法同様に、チップとフックを左右に広げる動きをする術者がいますが、非常に核が硬い場合以外は全く必要ありません。水晶体線維走行に合わせてフックを刺入できれば、綺麗に半分に割れます。Chop法に慣れていない術者は、チップとフックを左右に開きながら分割することでより簡単に核が分割されると信じている様ですが左右に開く必要はありません。フックの先端とチップの先端で挟み込む感じでフックだけを動かし、チップは固定しておくことです。フックとチップによる挟み込みが完成して核に亀裂が入る前に、チップとフックを左右に動かしてしまうと、チップで保持した核が崩れて核分割ができないことになります。挟み込みながら左右に開く動きって簡単にできる術者は多くないですよ。単純に、挟み込むだけで良いです。手術工程は、単純なことの繰り返しから成り立ってます。手術は、個々の手技を単純化(簡単に)して、それを積み重ねることです。ですから、左右に広げたければ、核が半分に割れてから左右に広げれば良いだけです。


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