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Phaco machine(PEA装置)を知る

更新日:2021年11月23日

術者として最低限知っておくべきことを述べますが、詳細は成書を読んでください。

Phaco machineは、本体、US(超音波)ハンドピース、I/A(irrigation and aspiration:灌流と吸引)ハンドピース、灌流ボトル、フットスイッチ、ハンドピースと本体を繋ぐ集液カセットから構成されます。


US mode、 I/A mode、A-vit modeを選択可能で、US modeでは、吸引圧、流量、USパワーと発振パターンを設定可能、I/A modeでは、最高吸引圧と吸引圧の上昇パターンを設定可能です。A-vit modeでは、吸引圧とカッターのon/offの選択が可能です。


USハンドピース

超音波チップを縦(軸)方向に、40kHzの周波数で約0.1mm振動(往復運動)させる機器です。この振動に伴い超音波を発するため超音波ハンドピースと呼ばれています。超音波で核を破砕するのではなくチップ先端が核にぶつかり核をどんどん破壊するということです。逆に、チップ先端が核と接触していないと核は破砕されないということです。またUSパワーとは、最大振幅を100%としてその何%で振幅させるかがUSパワーの定義です。即ち、最大振幅0.1mmの機器でのパワー30%は振幅0.03mmの振動ということです。チップの振動に伴い摩擦熱が発生し、パワーが上がれば更に多くの熱を発生します。術中問題となる熱の発生源はUSチップです、チップが接触する場所には細心の注意が必要です。


Phaco machineは、前房内への灌流液の流入量と流出量を等しくして前房内の圧バランスを取りながら手術を施行させる機器です。流入量は灌流ボトル高または灌流バッグ圧により決まり、流出量は、吸引圧、基礎吸引圧、吸引流量、創口からの漏れにより決まります。


吸引方式

Phaco machineの吸引は、ポンプにより行われていて、それには2種類が知られそれぞれには一長一短がありますが、最新の機器の比較ではほとんど差がなくなり両者とも安全かつ効率的に手術を行うことができるようになりました。しかし、両者の違いを理解した上で装置を操作することで最大効率による手術が可能になるため特性を理解しましょう。

2種類とはperistaltic pump (ペリスタルティックポンプ)とventuri pump(ベンチュリーポンプ)ですが、詳細は成書を読んでください。ここでは、最低限知っておくべきことだけ記載します。

ペリスタルティックポンプ

多くの機種でこのポンプを使用しています。吸引口が解放している状態では吸引圧は上昇せず、吸引口が閉塞(occlusion)して初めて吸引圧が上昇を始め完全に閉塞すると最大吸引圧(設定値)になります。ベンチュリーポンプと比較して吸引圧の立ち上がりがやや遅い特徴があり、一旦吸引圧が低下するとまた上昇するまでにやや時間がかかります。このため、効率の良い吸引のためには常に吸引口を閉塞するように使うことが肝心です。また、基礎吸引圧があまり高くないので、吸引口を吸引したい物に近接させないと吸引できないので細かい吸引口の位置調整が必要です。

ベンチュリーポンプ

吸引カセットに陰圧をかけることで吸引圧をコントロールするため、吸引口が閉塞していなくとも圧は上昇します。吸引圧の立ち上がりも早く、フットペダルにより術者自身で吸引圧をコントロールできるため効率の良い手術が可能です。サージ現象が起きやすい特徴がありますが、設定値の工夫でほとんど発生しないようにもできます。術者自身で吸引圧をフットペダルにより細かく調整可能で吸引したい物から吸引口が遠く離れていても眼内の水流に従って小さな核片は自然と吸引口に吸着してきます。自動吸引機の様な感覚で吸引が出来ます。

吸引圧

最高吸引圧は術者の好みの値に設定可能で、フットペダルにより0から最高吸引圧までコントロールしながら手術を施行できます。吸引圧を上げると核の把持力(hold ability)は良くなりますが、上げすぎると吸引口の閉塞が解放されると前房内が陰圧になりサージ現象が起こります。このため、バランスの良い設定が必要です。


基礎吸引圧

吸引口が開放した状態での吸引チューブ内の圧力(mmHg)です。ペリスタルティック方式では、設定した吸引流量によって変化し、ベンチュリー方式では吸引圧に伴って自動的に変化します。


吸引流量

吸引チップの先端から吸引される灌流液の量(mL/分)と定義されます。ペリスタルティック方式では吸引流量を設定可能ですが、ベンチュリー方式では吸引圧に伴って流量も変化します。吸引流量を上げると核を引きつける力(follow ability)が良くなりますが、上げすぎると虹彩や後囊の誤吸引に注意が必要です。


サージ現象

核片でチップ吸引口が閉塞(occlusion)され吸引圧が上昇している状態から核片が破砕され閉塞が急激に解除された直後は、吸引チューブ内が陰圧となることで前房内の灌流液が吸引され前房が一時的に不安定になる状態を言います。サージの予防には、吸引圧を下げることと核片の閉塞が解除される直前にフットを戻し吸引圧を下げる等が有効です。


US tip

各会社から種々のものが発売されていますが、縦方向の超音波発振に加えて横方向に回旋するTorsional tip(Alcon)とEllips tip(AMO)が開発され、破砕力と追従性に優れた効率的な手術が可能になりました。一般的に多く使われているのが30度のbalanced tip(Alcon)またはrose tip(AMO)です。


I/A tip

ポリマー製のチップが開発されるまでは、再使用可能な金属製のチップが使われていましたが、後囊の誤吸引に伴い後囊破損を起こすことが多々あり吸引口を後囊方向に向けることを禁忌にしている施設もありました。しかし、ポリマー製のチップの出現により、後囊の誤吸引による後囊破損はごく稀なことになりました。後囊破損を予防するためにもポリマーチップを使いましょう。


フットスペダル

US modeでは、3段階にフットペダルは踏み分けられ、一段階目がirrigation灌流、二段階目が吸引、三段階目が超音波発振となっていて音によりモードの切り替えが確認できます。I/A modeでは、一段目がirrigation、2段階目が吸引モードになっていて音によりその切り替えが確認できます。アルコン社のフットペダルは、超音波発振モードに入る前に振動が足に伝えられ超音波の誤発振を予防できます。

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