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前嚢切開 CCC

更新日:2021年11月20日

チストトーム、前嚢鑷子、ヘムトセカンドレーザーによる方法に大別されますがほとんどが、前2者の方法を行っていると思います。両者にはメリットとデメリットがありますが、簡単に短時間に施行できるのは圧倒的に鑷子です。




研修医の初手術時での5mm径のCCCの完成率は、私の経験ではチストトームでは10人に1人に対して鑷子では、9割は成功します。私の指導した研修医には全て鑷子でCCCを行ってもらっています。鑷子が安定して扱えるようになってからチストトームに移行することも可能です。

チストトームを常用する指導医が鑷子を使う事を嫌がる理由の一つは、前囊フラップをチストトーム使用時と同様に扱うからだと推察します。何故なら、把持したフラップを扱うにあたりチストトーム同様に円周方向に引っ張ってしまい切開線が流れてしまった経験があったりします。また、前囊上に翻転されたフラップを把持するにあたりチストトームが扱う同様の場所を鑷子により把持しようとすると先端が滑ってしまって掴めません。こうした理由で前囊鑷子を嫌うようですが、器具には使い方があってそれを間違えているだけです。使い方は後述しますが、器具が異なれば手技も変わることは容易に理解できるでしょう。

前嚢鑷子は、角膜創口またはサイドポートから挿入する2種に大別されます。サイドポートから挿入するタイプはチストトームに慣れた術者であれば、使用感がチストトームに似ているため違和感なく移行可能です。また、HealonVが使用できない施設では推奨されます。角膜創口から挿入する鑷子は、操作中にOVDが漏れ出て前房が消失することがあるので、HealonVで角膜創口に蓋をしてOVDの漏れを抑制する必要があります。サイドポートから挿入する場合は、OVDの漏れは生じ難いですが、鑷子がギリギリ挿入できるほどの切開しかないため鑷子の自由な動きを制限します。このため、テコの動きに慣れていない術者にはとても扱い難い器具ですし、創口が狭過ぎた場合は、思いがけない力が入ってそれが解放された時にフラップが大きく裂けて切開線が流れてしまったりします。逆に創口が大き過ぎるとOVDが漏れてしまいます。15度ナイフによるサイドポート作成は、毎回同じ幅の創口を作成するのは結構難しいものです。

HealonVは、採用されていない施設も多いかと思いますが、小瞳孔、IFIS、後囊破損時、硝子体脱出時、CCCが流れかけた時には重宝するため必ず採用してください。使い慣れていないものを緊急時にだけ使用しているとさらなる事故につながることがあるため、慣れるためにも毎回使ってください。また、術前に1ccシリンジに0.1cc程分注したものを数本用意しておくとコストダウンにもつながります。患者一人当たり0.1ccで十分です。分注の仕方ですが、シリンジの押子を引き0.1ccの目盛りに合わせます。筒先からHealonVを空気が入らないように注入し分注してください。

前嚢鑷子の把持は、その形態から母指と示指で把持すると一番手に馴染む様に感じるためその様に持つ術者が多いです。しかしその持ち方では、9時方向の前嚢を扱うにあたり窮屈さを感じると思います。また、鑷子先端部分は二つに分かれていて2本の指先で握ることで先端が動いて前嚢を把持できる構造になっています。このため、把持したい部位を2本の先端の中央部に置き、2本の指先に同じ圧をかけて先端を動かすことによってのみ目的部分を正確に把持できます。しかし、筋肉量が全く異なる母指と示指に同じ力を加えながら先端がぶれないように保持することは非常に困難です。そこで、片方の先端を動かないように固定して指先にそれほど力を加えずに動かす方法を推奨します。例えば、散髪用のはさみの動きを参考にしてみましょう。軸になる刃(静刃)と動かす刃(動刃)があり片刃が動かないように固定することで切る髪の長さを一定にできます。その応用ですが、前嚢鑷子をペンホルダーで把持します。これにより、母指、示指と中指の3指の握りにより前嚢が把持できるようになります(ビデオ)。ここで、中指と示指は固定して母指だけ動かすと鑷子の一方だけが動きます。静刃を把持したい物の横に置き、動刃を母指で動かすことで目的の前嚢を容易に把持できようになります。また、母指は極弱い力を加えるだけで鑷子を扱うことが可能であり、他の指と比較して母指は単独でも動かしやすい指のため、鑷子の先端部分がぶれることは少なくなります。最初は違和感を感じるかもしれませんが、各種鑷子、スプリング剪刀、池田式前嚢鑷子に応用可能で、ほぼ全ての器具をペンホルダーの3指で把持し同様の使用法を行うと手術が簡単になります。



前嚢鑷子の把持法が理解できたところで、本題のCCC作成法を解説します。

筆者が愛用している稲村式前嚢鑷子を使用してのCCCの作成です。右手のペンホルダーでふんわりやわらかく鑷子を把持し左手を右手に添えます。左手の親指は右手の親指に添え、左手の示指は右手の示指に接し、中指は鑷子に触れながらそれぞれセンサーの役割を担います。両刃を閉じて角膜創口から挿入します。この鑷子の先端は尖っているためその部位を使って水晶体中央部の前嚢を下方に押し込み穴を開けます。この時両刃は閉じていても開いていても構いません。その後、動刃を切開部に置き静刃を把持したい前嚢の上にのせ、鑷子を把持した親指だけを動かして前嚢を把持します(ビデオ CCC)。静刃が前嚢に触れるとその周辺にハローが現れます。これにより、鑷子先端の正確な位置を認識して動刃により前嚢を把持します。前嚢を下方に押し込む距離が大きいほどより大きなハローが出現します。次に、3時方向に把持した前嚢のフラップを引っ張りCCCの半径を決めます。4時、5時、6時の方向に切開線を伸ばし、6時でフラップを持ち替えます。持ち替える部位は、切開線の始点近傍でフラップの折帰り部を把持して7時8時9時に切開線を進めます。9時でまたフラップを同様に持ち替え、10時11時12時1時まで切開線を進めます。12時の切開線は鑷子の影に隠れてしまい見えなくなりますがフラップの引っ張る方向を上記同様に行えば問題なく1時まで円形のCCCが連続します。1時で持ち替えを行わなければならないかはその時の把持した鑷子が角膜内皮に触れない様であればそのままCCCを完成させれば良く、内皮に触れそうであれば持ち替えてからCCCを完成させます。

初心者はフラップの持ち替えに苦労しますが、持ち替えのための準備を怠っているからです。持ち替える前に、切開線近傍のフラップが水晶体表面より少し浮いた状態にしておくとより簡単にフラップを把持できます。また、持ち替える回数を減らすためには切開線始点部近傍を把持することです。

フラップを引っ張る方向と切開線の向かう方向には規則性があるため解説します。チストトームを使ったことのない術者は問題ないですが、チストトームに慣れている術者はチストトームで前嚢を扱うように鑷子でも同様に切開線を進めようとするため、CCCは外側に流れて行ってしまいます。切開線と把持したフラップとの距離の違いにより引っ張る方向が異なります。即ち、切開線始点の近傍を把持している場合は切開線を進めたい方向に引っ張り、フラップが長くなるに従い引っ張る方向は切開線を進めたい方向より内側に移動させて行く必要があります。一寸難しい印象を与えたかもしれませんが、切開線が進んで行く方向を見ながら引っ張る方向を徐々に変えてゆけば良いだけなので、それほど難しいことではありません(ビデオ CCC)。



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